遂行機能障害に対する作業療法【症状と評価の概要について】

こんにちは、カピまるです。

今回は、「遂行機能障害に対する作業療法」をテーマに、症状と用いる評価の概要について解説していきます。

遂行機能障害は、臨床場面で非常に関わる機会が多く、作業療法士として臨床で働く上で理解しておくべき重要疾患の1つです。

本記事では、主に遂行機能障害に関する基礎部分について分かりやすくまとめていきます。

是非参考にしていただき、今後の学習に役立てて下さい。

その他疾患に関する記事も併せてご覧下さい。

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遂行機能の概要

ではまず初めに、遂行機能障害の説明の前に「遂行機能」についてまとめます。

1.遂行機能とはそもそも何か

遂行機能(Executive function)とは、目的を持った一連の活動を効果的に成し遂げるために必要な機能のことです。

もう少し嚙み砕いて説明すると、「行動を開始し、様々な情報を役立てながらその行動をコントロールする機能」です。

この機能は、

  • 記憶
  • 注意
  • 言語
  • 知覚
  • 運動

といった、複数の要素的な高次脳機能を統合・制御するため、より上位の高次脳機能であるといえます。

この遂行機能には、前頭葉、特に背外側前頭前野(前頭連合野)が中心的役割を果たしていると考えられています。

2.遂行機能の要素

遂行機能を最初に定義したレザック(Lezak)によれば、主に以下4つの要素から構成されています。

構成要素内容
①意志やりたいこと、自分に必要なことを見極め、現実的な将来像を実感した上で目標を設定したり、行動を見極める能力。
②企画目標に至るために状況を考慮しつつ複数の手立てを想定したり、その中から最適な手段を選択する能力
③計画の実行行為の開始、維持、変換、停止について
④行為の効率化自らの行為を含めた状況をモニターし、状況が設定した目標に向かっているかを判断する。
向かっていない場合には、軌道修正することが出来る能力

①~④は実行する時系列で整理されており、遂行機能のプロセスとして示されています。

3.遂行機能の分類

遂行機能は後述の通り、いくつかの要素によって構成されています。

遂行機能自体を発揮するためには、以下のような機能が必要とされています。

  • 概念機能
  • ワーキングメモリー
  • 遂行機能の構成要素

「概念機能」とは、情報を整理するために必要な機能であり、物事を概念化したり一般化したり、あるいはカテゴリー化する機能のことです。

様々な物事に関する情報を集め、一定の規則や原則に基づいて思考することは、意思決定を行うために非常に重要な機能です。

また「ワーキングメモリー」とは、記憶の一種として並列的あるいは二重課題を行う際に重要な機能です。

遂行機能障害の概要

続いて、遂行機能障害の概要についてまとめていきます。

1.遂行機能障害の定義

遂行機能障害は、前頭前野の障害によって上記の様々な機能が十分に行動に反映されず、その場に適した効率的な作業遂行が困難になります。

主に以下の機能が障害された状態と考えられています。

  • 目標の設定
  • 計画の立案
  • 目標に向かって計画を実際に行うこと
  • 効果的に行動を行うこと

2.遂行機能障害の症状

ここでは、先述した遂行機能の構成要素ごとに症状を整理していきます。

【意志】

  • 自分に必要なことが何か分からなくなる
  • 自発的に何かにチャレンジしたり、行動に移すことが困難になる
  • 周囲のことに無関心になってしまう(例:食事に手を付けない、ボーっとして何もせずに過ごす時間が増える)

【企画】

  • 目標に向けて順序立てて行動することが困難になる
  • 衝動的、突発的な行動を取りがち
  • 料理が出来ない(道具の準備→食材を洗う・切る→調理するといった順序がごちゃごちゃになってしまう)

【計画の実行】

  • 一旦行動を止めると、順序通り行えなくなってしまう
  • 止めるよう指示されても、時間が掛かってしまう
  • 休憩を上手く挟めなくなるので、何かに取り組む際に疲れやすい

【行為の効率化】

  • 作業時間が無駄に多くかかってしまう
  • 全体の作業工程を見直すことが困難なため、仕事でミスが生じやすい
  • 全体として作業が拙劣で、それに対し自己修正することが困難である

具体的な日常生活場面における遂行機能障害の影響として、以下のようなことが確認出来ます。

日常生活活動(ADL)障害の例
金銭管理ATMでお金を引き出せない、振り込めない
カードの利用方法が分からない
服薬管理処方された通りに服薬が行えない
自身の症状について、かかりつけ医に上手く説明出来ない
買い物複数の商品を購入出来ない、場所が分からなくなってしまう
適切な店で商品が買えない
割引やサービスの利用方法が分からない
調理順序立てて行えない
複数のことを同時に行えない(炒め物をしながらサラダを盛り付ける、等)
段取りが悪く、時間が掛かってしまう
趣味活動携帯電話やリモコンの操作方法が分からない
自分で旅行の計画を立てることが出来ない
自動車を運転する際、周囲に十分な意識を向けられず、事故が増えてしまう

遂行機能障害の評価

遂行機能障害の評価尺度として使用されているものを紹介していきます。

注意

遂行機能は非常に多岐に渡り、かつ高次な機能であるため、1つの評価尺度で評価しきれるものではありません。あくまで部分的な機能に対する評価尺度であると、あらかじめ理解しておく必要があります。

種類評価尺度
概念機能WCST (Wisconsin Card Sorting Test)
Vygotsky Test
Fluency Test
ワーキングメモリーPASAT
memory updating test
Reading Span Test
遂行機能の評価【要素的評価】
ハノイの塔
Cognitive Estimation
迷路課題
Tinkertoy Test
【総合評価】
FAB (Frontal Assessment Battery)
BADS (Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome)
行動観察【行動観察評価】
食事、排泄、整容等について行動観察し、重症度を推測出来る
【質問表による評価】
DEX (Dysexecutive Questionnaire)
(BADS内に含まれている行動・認知・情動に関する質問表)

評価実施前の確認事項

遂行機能の評価を実施する際には、事前の確認事項がいくつか存在します。

確認事項
  • 言語理解、道具の扱い方、注意障害や記憶障害の有無といった、要素的な高次脳機能障害の評価を事前に済ませておく
  • 前頭葉損傷の場合、複数の高次脳機能障害の合併が考えられるため、上述した評価尺度のどれが適当か見極める
  • 評価の実施に適した、外的刺激の少ない静かな環境を準備しておく
  • 眠気に影響されない、十分に覚醒している時間帯を把握する
  • BADSやFABは評価に時間が掛かるため、口頭指示の仕方に配慮したりスムーズに実施出来るように入念に練習しておく

遂行機能は非常に多岐にわたるため、使用する評価尺度も様々な課題を用いて時間をかけて評価するものが多いです。

対象者の方への心身への負担を減らすためにも、事前の情報収集や手順の確認など、入念に準備を行った上で評価に臨むようにしましょう。

最後に

本記事では、「遂行機能障害に対する作業療法」をテーマに、症状と用いる評価の概要について解説してきました。いかがでしたでしょうか。

遂行機能障害は、非常にボリュームのある分野のため学習も大変ですが、臨床場面で非常に関わる機会が多い疾患のため、今一度基本事項について確認しておきましょう。

本記事を参考にしていただき、今後の学習に役立てていただければ幸いです。

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