こんにちは、カピまるです。
今回は、『褥瘡の発生原因や治療方法、予防方法』をテーマに解説していきます。

褥瘡って重要な合併症だったよね!
脊髄損傷と関連が深かったような…

評価・予防方法について、
詳しく知りたいです!
本記事では、こうしたご意見にお答えしていきます。
上記に該当する方は、ぜひ最後までご覧いただき、今後の学習の参考にしてください。
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褥瘡の概要

褥瘡は、以下のように定義されています。
- 長時間同じ体勢で寝たきり等になることで、体と支持面(多くはベッド)との接触局所で血行不全となり、周辺組織に壊死を起こすもの。
- 一般的には『床ずれ』とも呼ばれる。
- 「偶発性褥瘡」と「尋常性褥瘡」の2つに大別される。
褥瘡は、一定箇所に持続的な圧力がかかることによって発生します。
持続的な圧力によって組織の血流が減少し、低酸素状態となることで組織が壊死します。
◎褥瘡になりやすい人とは?
褥瘡になりやすい人というのは、主に以下のような人です。
- 自力で体位変換ができない人
- 長時間寝たきり状態の人
- 栄養状態が悪い人
- 皮膚が弱くなっている人
長時間の圧迫だけでなく、摩擦や擦れなどの刺激によっても褥瘡は発生します。
- 高齢者
- 排泄物や汗で皮膚のふやけがある方
- 抗がん剤やステロイド剤等で免疫力が低下している方
上記に該当する方は、発生リスクが高いため、注意が必要です。
褥瘡の主な原因

褥瘡の主な原因は、「外的因子」と「内的因子」の2つに大別されます。
◎外的因子
外的因子とは、外力に対して組織内部に発生する内力としての応力が主たるものです。
- 組織に垂直に作用する圧力(いわゆる「体圧」)に対して生じる圧縮応力
- 組織と支持面の間の摩擦やずれによって生じる引っ張り応力
褥瘡の一番の原因である『長時間の寝たきり』は、この外的因子に該当します。
◎内的因子
内的因子には、以下のようなものが挙げられます。
- 加齢
- 低栄養
- 感覚・運動麻痺
- 乾皮症
内的因子の種類は、このように多岐にわたります。
◎危険因子として注意すべき疾患
褥瘡発生の危険因子として、以下の疾患には特に注意が必要です。
- うっ血性心不全
- 骨盤骨折
- 脊髄損傷
- 糖尿病
- 脳血管疾患
- 慢性閉塞性肺疾患
これらの疾患は、
- 寝たきり状態
- 低栄養
- 感覚・運動麻痺
といった症状を引き起こすため、褥瘡の発生リスクを高めます。
褥瘡の好発部位


褥瘡が発生しやすい部位とか、
何か特徴があるのかな…?
取っている姿勢によって、褥瘡の好発部位はそれぞれ異なります。
共通するのは、『骨が突き出した部位は強く圧迫され、褥瘡ができやすい』ことです。
◎好発部位(仰臥位)
仰臥位における好発部位は、以下のとおりです。
- 後頭部
- 肩甲骨部
- 肋骨角部
- 脊柱棘突起部
- 仙尾、仙腸部
- 距骨部

◎好発部位(側臥位)
側臥位における好発部位は、以下のとおりです。
- 側頭部
- 耳介
- 肩峰部
- 肩甲骨部
- 腸骨稜部
- 膝関節外側部
- 大転子部
- 腓骨頭部
- 足関節内、外踝部

◎好発部位(座位)
座位における好発部位は、以下のとおりです。
- 肩甲骨部
- 肘関節部
- 尾骨部
- 座骨部
- 踵部
褥瘡の評価方法

褥瘡の評価では、一般的に「DESIGN(デザイン)分類」が使用されます。
DESIGNとは、日本褥瘡学会学術教育委員会が開発した褥瘡状態判定スケールです。
褥瘡の重症度を分類するとともに、治癒過程を数量化することを目的とした評価様式です。
◎採点項目
DESIGN分類における採点項目は、以下の6項目です。
- 褥瘡の深さ(Depth)
- 滲出液(Exudate)
- 大きさ(Size)
- 炎症/感染(Inflammation/Infection)
- 肉芽組織(Granulation)
- 壊死組織(Necrotic tissue)
- ポケット(Pocket)
「ポケット」を除いたそれぞれの頭文字が、『DESIGN(デザイン)』です。

頭文字だったんだ!
評価項目が分かりやすいね!
◎採点方法
DESING-R 2020では、以下の評価表を用いて採点します。

0点~66点の範囲で採点し、点数が高いほど重症度が高いことを意味します。
また各項目では、小文字よりも大文字の方が重症度が高いことを表します。
◎進行度による分類
褥瘡の進行度分類では、「NPUAP分類」か「Shea分類が」使用されます。
- 『治療』⇒NPUAP分類
- 『予防』⇒Shea分類
参考までに、NPUAP分類についてご紹介します。
グレード | 概要 |
DTI疑い | 圧力およびせん断力によって生じる皮下軟部組織の損傷に起因する、 限局性の紫または栗色の皮膚変色、または血疱。 |
Ⅰ度 | 傷害が表皮にとどまっている状態。 局所の発赤(紅斑)、表皮剥離(びらん) |
Ⅱ度 | 傷害が真皮に及び、真皮までの皮膚潰瘍が生じている状態。 水泡が形成されることもあり、壊死組織の付着や細菌感染が生じやすい。 |
Ⅲ度 | 皮下組織に達する欠損が生じている状態 |
Ⅳ度 | 筋肉や骨まで損傷された状態。 骨が壊死して腐骨となったり、骨髄炎や敗血症を併発する場合もある。 |
U | 深さ判定が不能な場合。 |
褥瘡の予防方法

先ほども述べましたが、褥瘡の発生原因として以下の5つが挙げられます。
- 運動麻痺や感覚麻痺によるもの
- 低栄養状態によるもの
- 全身状態の悪化によるもの
- 皮膚の不衛生状態によるもの
- マット類の固さによるもの
褥瘡を予防するためには、環境作りと適切なケアの実施がポイントとなります。
褥瘡に対するケアについては、ガイドラインでも紹介されていますので、参考にして下さい。
それぞれの原因に対する予防法について、順番に解説します。
◎運動麻痺や感覚麻痺によるもの
脊髄損傷による運動麻痺や感覚麻痺の影響によって、
- 自分で姿勢を変えることが出来ない
- ずっと同じ体勢でも痛みを感じない
このような状態になってしまうと、褥瘡の発生リスクが高まります。
予防法としては、基本的に2時間以内の間隔で、体位変換を行う必要があります。
仙骨や踵は、座位や立位を保つ上で特に重要な箇所です。
そうした部位に圧力がかかりやすい背臥位は避けて、左右側臥位をとることが望ましいです。

◎低栄養状態によるもの
低栄養状態は、褥瘡の発生リスクを高めるとともに、治りにくさにも影響します。
食事面の管理も非常に重要となるため、栄養士の方との連携は欠かせません。
各種栄養素をバランスよく摂取できるように、食事の摂取方法についても注意が必要です。

◎全身状態の悪化によるもの
全身状態の悪化というのは、例えば以下のような状態です。
- 呼吸状態の悪化
- 循環不全や血行不良
- 関節拘縮
- 筋力低下
褥瘡は関節拘縮や血行不良によっても悪化していきます。
寝たきりの方の関節を動かすことや寝返りを促すことは、褥瘡の予防につながります。
患者の早期離床を促し、全身機能の維持・増進を目指すことがとても重要です。
◎皮膚の不衛生状態によるもの
不衛生な状態というのは、尿・便失禁、汗などによって皮膚が水分を含んでいる状態です。
このような状態では、褥瘡や感染症などを引き起こすリスクが高まります。
予防法として、
- 適切な排便・排泄管理を行うこと
- スキンケアを定期的に行うこと
この2点は、特に重要となります。
陰部のみならず、全身状態を衛生的に保つことが大切です。

◎マット類の固さによるもの
褥瘡の予防法として、体圧分散マットレスの使用が推奨されています。
普段使っているマット類の固さは、身体へかかる負担に大きく影響を及ぼします。
感覚障害によって痛みを訴えにくい方もいるため、その方の状態にあっているかどうかを意識しながら接するようにしましょう。

患者さんとのコミュニケーションが
とても重要なんだね!

さいごに
本記事では、『褥瘡の発生原因や治療方法、予防方法』をテーマに解説しました。
褥瘡は脊髄損傷患者だけでなく、高齢者においても重要な問題とされています。
リハビリテーション専門職として褥瘡の概要を知り、適切なケアを実践することが大切です。
本記事を今後の学習に役立てていただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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