かぴまる最近コンプレッションウェアを着用しているランナーをよく目にするけど、あれってどんな効果があるんだろう?走るのが速くなるとか、劇的な効果が期待できるのかな?
最近では、ランニングショップに行けば、様々なコンプレッションウェア(タイツ、アーム・カーフスリーブ、ソックス等)を目にするようになりました。
エリートランナーに限らず、レース本番や日々のトレーニングの中で愛用している方も多いでしょう。
コンプレッションウェアといえば、
- 着圧によって血流が良くなる?
- 脚が前に出やすくなってタイムが縮む?
- スタミナが持続する?
・・などと言われてきましたが、実際のところ、本当にこのような効果はあるのでしょうか?
2025年、スポーツ科学界で非常に注目すべき高精度な研究成果(メタアナリシス論文)が発表されました。過去に行われた厳格な実験データをこれでもかと集めて分析した結果、ランナーにとって少しショッキングな、しかし見逃せない事実が明らかになったのです。
それがこちらの論文↓
本記事では、こちらの論文をベースに、「コンプレッションウェアは本当にランニングを速くするのか?」という疑問の答えと、データから導き出されるランナーのための正しい選び方・使い方を徹底的に解説します。

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今回紹介する論文とデータの信頼性について

今回ベースにするのは、2025年1月に『Journal of Sport and Health Science』に掲載された『Do compression garments enhance running performance? An updated systematic review and meta-analysis(コンプレッションウェアはランニングパフォーマンスを向上させるか?最新の系統的レビューとメタアナリシス)』という論文です。
上海体育大学などの研究チームによって発表されました。
「メタアナリシス」とは、過去に行われた複数の独立した研究データを集め、統計的に統合して大きな一つの結論を導き出す手法のことです。科学的根拠(エビデンス)のピラミッドにおいて最上位に位置する、最も信頼性の高い研究手法とされています。
今回の論文の特筆すべき点は、その規模と厳格さです。
- 対象となった研究数: 51件のランダム化比較試験(RCT)
- 研究への総参加人数:899人のランナー
- 検証されたアイテム:ショーツ、タイツ、ソックス、アーム・カーフスリーブ、全身用ウエア
- シチュエーション:短距離~フルマラソン、トレッドミル、ロード、トラック、トレイル
つまり、「実験室の中だけの特殊なデータ」ではなく、私たちが普段走っているあらゆる環境、あらゆるギア、あらゆる競技レベル(健康な成人、recreationalランナー、competitiveランナー)を網羅した研究なのです。
コンプレッションウェアを着用して『向上しなかった指標』

コンプレッションウェアを『①:着用して走った場合』と『②:着用せずに走った場合(コントロール群)』を比較したところ、以下の指標において統計的に有意な差(メリット)は認められなかったのです。
統計的な差がなかった指標
- レースタイム
- オールアウトまでの時間
- 生理学的な指標(酸素摂取量など)
それぞれ順番に見て行きましょう。
①:レースタイム
100m〜400mの短距離、5km〜10km、15km〜24kmの中長距離、そしてフルマラソンにいたるまで、どの距離グループにおいてもコンプレッションウェア着用によるタイムの向上は見られませんでした。
コンプレッションウエアを着用しても、直接的にペースが上がるわけではない
ということが示されています。
②:オールアウトまでの時間
設定された一定のランニング強度をどれだけ長く維持できるかという『タイム・トゥ・エグゾースチョン(Time to Exhaustion:疲労困憊にいたるまでの時間)』も、ウエアの有無で変化はありませんでした。
スタミナの限界値を引き上げるような直接的な効果は期待できない
ことが示されています。
③:生理学的な指標(酸素摂取量など)
『ウエアを着るとランニングエコノミー(走りの経済性・効率性)が良くなる』という説もあります。
ただ、今回の論文によると、走行中の最大下酸素摂取量(運動効率の指標)や、筋肉の組織酸素化インデックス(組織の酸素状態)にも、コンプレッションウェア着用による明確なメリットは確認されませんでした。
ギアの種類や路面状況を問わず、『向上なし』という結果に。
論文内の『サブグループ解析』において、ギアの種類(タイツなのか、ソックスなのか、アーム・カーフスリーブなのか)や、走る路面(ロードなのか、トレッドミルなのか、不整地トレイルなのか)で細かくデータを切り分けて検証しました。
しかし結果は、一貫して『パフォーマンスの向上効果なし』というものでした。
コンプレッションウェアを着用する真の効果

かぴまるここまで読むと、『コンプレッションウェアを買う意味なんてないんじゃない?』って思っちゃうなぁ。
この論文は、コンプレッションウェアの価値を全否定したわけではありません。
むしろ、コンプレッションウェアが身体にもたらす『決定的な効果」について、統計的データで証明しています。
『軟部組織の振動(筋肉の揺れ)』を抑え込む効果↑
ランニング中、私たちの足が地面に着地するたびに、体重の数倍という強い衝撃が加わります。
この衝撃によって、太ももやふくらはぎの筋肉、脂肪などの軟部組織は、ブルブルと細かく、無駄に振動しています。
論文では、
コンプレッションウェアを着用すると、この「ランニング中の筋肉の無駄な揺れ(振動)」が有意に減少する
ことが明確に実証されました。
この『筋肉の揺れを抑える』という事実こそが、タイムや酸素摂取量といった直接的な数値には表れにくい、コンプレッションウェアの真の価値なのです。
考察:数値に表れない効果をどのように解釈するか

ここからは、日々トレーニングに励むランナーの目線に立って、この論文の結果をどのように解釈し、そしてどのように実戦に活かすべきかを深掘りしていきます。
①:『タイムが変わらない』≠『意味がない』
論文では、「コンプレッションウェアを着用しても、レースタイムは向上しなかった」とされています。
しかしこれは、あくまで『1回の実験、1回のレースにおいて、物理的なスピードが直接上がったわけではない』という意味です。
私たちランナーにとって大切なのは、
日々の過酷な練習をどれだけ消化できるか
翌日にどれだけ疲労を残さないか
ということです。
筋肉が着地のたびにムダに揺れると、それだけで筋肉への微細なダメージが蓄積し、神経的な疲労やエネルギー消費(ムダな力み)につながります。
コンプレッションウェアがその揺れをギプスのように包み込んで抑えてくれるのであれば、走行中の筋肉のダメージ蓄積は、確実に緩和されているはずです。
②:ウェアのホールド感は、長距離・長時間になるほど効果↑
1回のポイント練習(例:1000mインターバルなど)では、ウエアによる筋肉の揺れ抑制効果がタイムに与える影響は微小かもしれません。
しかし、これが『25km〜30kmのロングジョグ』『フルマラソンの後半』、あるいは『アップダウンの激しいトレイルランニング』となったらどうでしょう。
何万歩、何十万歩と着地を繰り返す中で、一歩一歩の筋肉のブレが数%ずつ抑えられるとしたら、レース後半の「脚が売り切れる感覚」や「ガクッとペースが落ちるリスク」を軽減できる可能性は十分にあります。
③:メンタル・プロプリオセプション(固有感覚)への好影響
実際にコンプレッションウェアを履いてみると、
脚がカチッと引き締まって走りやすい
一歩一歩の足さばきが安定する気がする
といった感想を持つ方が多くいます。
皮膚に適度な圧力が加わることで、自分の関節や筋肉が今どう動いているかを感じ取るセンサー(固有感覚:プロプリオセプション)が刺激され、走りのフォームが安定しやすくなるというバイオメカニクス的な側面もあります。
論文の数値には直接出なくとも、『走っていて安心感がある』『集中できる』という心理的・感覚的なメリットは、長距離を走る上で強力な味方になります。
コンプレッションウェアの正しい選び方・使い方

これまでの内容をふまえた上で、私たちが今後どのようにコンプレッションウェアを選び、使っていくべきか、具体的なロードマップを提案します。
①:選び方のポイント
コンプレッションウェアを選ぶ際のポイントとして、以下の3つを押さえておきましょう。
選び方のポイント3選
- 『速くなるため』ではなく『保護するため』
- ギア毎の役割を理解する
- 着圧とサイズ感を優先する
それぞれ順番に見ていきましょう。
選び方①:『速くなるため』ではなく『保護するため』
これを履けばサブ3が達成できる!!
Tペース(閾値ペース)が楽になる!!
といった魔法の効果を期待して買うのはNGです。
そうではなく、「後半の脚の落ち込みを防ぎたい」「着地衝撃による筋肉痛を減らしたい」という、カラダを保護する目的で導入するのが正解です。
選び方②:ギア毎の役割を理解する
コンプレッションウェアは、そのパーツ(部位)毎の役割を理解したうえで着用すると、さらに効果が高まります。
たとえば、
- フルタイツ:太ももやお尻、膝まで全体をカバーする
- カーフスリーブ・ソックス:ふくらはぎを集中的にカバーする
といった感じ。
フルタイツの場合、筋肉量が大きくブレやすい太もものサポートに加えて膝周りのサポートもできるので、膝に負担が大きい下り坂が多いコースやロングジョグに最適です。
カーフスリーブ・ソックスの場合、比較的軽量で足さばきを邪魔しないため、『タイツだと重い・動きにくい』と感じる方に向いています。
N君どのような状況で使用するのか、コンプレッションウェアを着用するとどう感じるのか、自分自身の感覚も大切にしながら選ぶと良いよ!
選び方③:着圧とサイズ感を優先する
論文でも指摘されているように、コンプレッションウエアはそのブランドや製品によって、カラダにかかる圧力が異なります。
きつすぎると血流を阻害し、逆に緩すぎると筋肉の揺れを抑えられません。
メーカーのサイズチャートを必ず確認し、試着ができる場合は、『ただキツい』ではなく『筋肉が適度にホールドされているか』を基準に選びましょう
使い方①:シチュエーションに応じて履き分ける
たとえば、
- スピード練習
- ロングジョグ
- レース本番
といったシーンでの履き分けを考えてみます。
スピード練習(インターバル・レペティションなど)では、 動きやすさや足さばきの軽さを最優先し、ふくらはぎのブレだけを抑えるカーフスリーブのみでも十分でしょう。
ロングジョグや下り坂が多いコースを走る際は、着地衝撃が長時間に及び、筋肉へのダメージが大きいため、フルタイツを着用することで筋肉のブレを防ぎます。
レース本番は、レース後半の筋肉の疲労やダメージによる失速を防ぐため、ホールド感の好みに合わせてフルタイツ、あるいはショーツ&カーフスリーブを導入するのがおすすめです。
使い方②:運動後のリカバリーとして活用する
コンプレッションウェアは、運動中だけでなく『運動後』に着用することで、静脈還流(血液が心臓に戻る流れ)を助け、回復を早める効果が報告されています。
レースや高強度なポイント練習が終わった後、クリーンなコンプレッションソックスやタイツに履き替えて数時間過ごす、あるいは就寝時(就寝専用の着圧が低いもの)に着用してみましょう。
翌日の脚の軽さにつながり、月間走行距離のボリューム維持に貢献してくれます。
まとめ:

本記事で紹介した論文の結論ををシンプルにまとめます。
- コンプレッションウェアでタイムが速くなったり、心肺機能が上がることはない。
- 接地時に生じる筋肉のブレを抑え込む効果は証明されている。
論文上のデータはシビアですが、『コンプレッションウェアは全くムダだ』というワケではありません。
走っている時のカチッとした安心感やレース後半の粘り、翌日のダメージの少なさというのは、多くのランナーが肌で感じている事実(主観)だからです。
大切なのは、ギアの特性と科学的な現実を正しく知った上で、自分の身体の感覚と相談しながら上手に付き合っていくこと。
最新のエビデンスを武器に、日々のランニングライフや目標達成に向けたトレーニングを組み立てていきましょう!
今回は以上です。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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