こんにちは、カピまるです。
今回は、「感覚・知覚の基礎知識」をテーマに解説していきます。

「感覚と知覚の違いは何でしょうか。体性感覚や深部感覚と色々習いましたが、イマイチ理解出来ません。教えてください。」
本記事では、こうした悩みに答えていこうと思います。
「感覚・知覚について理解が曖昧だなぁ…」という方は必見です。是非最後までご覧下さい。
「感覚」と「知覚」の違い

まず初めに「感覚」と「知覚」の違いについてまとめていきます。
感覚(sensation)とは、光や音のような生体外の事象や、生体組織の歪みや体内の化学物質といった生体内の様々な事象によって、直接起こされた意識過程のことである。
これに対し知覚(perception)とは、感覚を素材として、さらに記憶や推理といった高次の神経作用を加えて、刺激源あるいは対象物を統一的・全体的に捉えることである。
感覚とは – コトバンク (kotobank.jp)
「感覚」と「知覚」という2つの用語は、生理学・リハビリテーション医学・手外科領域といった関りが深い専門領域においても、未だ統一見解がありません。
リハビリテーション領域において一般的に理解されているのは、理論的には以下の階層構造を有しているということです。
感覚(sensation)⇒ 知覚(perception) ⇒ 認知(cognition)
外部から刺激入力を受けると、感覚受容器がそれを感じ取り、受容器から送られた信号を脳内で処理することで捉え、さらに高次な情報処理によって判断・理解します。
「知覚」や「認知」という過程へと進むにつれて、「熱い」「重い」「固い」といったように、外部からの刺激情報が徐々に具体的になっていくイメージになります。
感覚・知覚検査の意義

僕自身も作業療法士として勤務していますが、感覚・知覚障害を有する方と関わる機会は非常に多いです。
ではそもそも、なぜ「感覚」や「知覚」を評価する必要があるのでしょうか。
これはヒトの手の感覚・知覚障害がもたらす問題点について考えると理解しやすいと思います。
例えば、以下のような問題が生じたとします。
- 探索・識別機能の障害
- 手の動きの障害
- 把持動作の障害
- 防御知覚(痛覚、温度覚)の障害
それぞれの障害が、日常生活に及ぼす影響について考えてみましょう。
1.探索・識別機能の障害

カバンの中を見ながらじゃないと物が探せない…

シャツの襟元のボタンが留められない…
このような場面を想像することが出来るのではないでしょうか。
- 主に触覚や深部感覚の障害によって引き起こされる。
- 触るだけでは識別出来ず、他の感覚機能(視覚)で代償する必要がある
- そのため視覚的に確認出来ない部分では、物体の位置や方向が分からなくなる
2.手の動きの障害

思ったような手の形に動かせないなぁ

物を取ろうとしても、手が上手く入らなくて難しいよ…
感覚・知覚機能の障害によって、こうした手の動きについても影響が及ぶ場合があります。
- 主に深部感覚(関節定位覚、位置覚、運動覚)の障害によって引き起こされる
- 物を把握するための適切な手のかまえを作れない
- そのためポケットや容器の中に手を入れることが出来なくなる
3.把持動作の障害

物を掴んでも、すぐに落としてしまうよ…

変わった形の物が掴みにくいなぁ…力が入り過ぎちゃう。
「2.手の動きの障害」と類似しますが、変わった形の物体が持ちにくくなったり力の調整が難しくなるといった、運動調節機能の障害がみられる場合があります。
- 主に深部感覚(関節定位覚・位置覚・運動覚)の障害によって引き起こされる
- 把持した物体を途中で落としたり、手の向きを変えた途端に落としてしまう
- ゆっくりとして運動が出来ない
- 動作が拙劣になり、何度も繰り返すことが出来ない
4.防御知覚(痛覚、温度覚)の障害

最近、知らないうちに擦り傷が出来るなぁ

怪我しても治りが遅い気がするけど何でだろう…
防御知覚の障害は、日常生活を送る上で非常に大きな影響を与え得るものであるため、大きな事故にならないよう管理をきちんと行う必要があります。
- 主に表在感覚(触覚・痛覚・温度覚)の障害によって引き起こされる
- 痛みを感じにくくなると、擦過傷や外傷、熱傷を受けやすい
- 怪我に気付かないことも多く、中々治癒しないことも多く、症状も悪化しやすい。
【まとめ】感覚・知覚検査の意義
作業療法場面では、対象者の方の日常生活活動(ADL)と退院後の社会生活とを結びつけていくことが非常に重要です。
感覚・知覚検査は、ADLと社会生活を想定し治療計画を立案する上で重要な指標となります。
そのため治療を行う前に、きちんとした検査を実施する必要があります。
感覚・知覚検査の意義を以下にまとめます。
- ADL動作障害を感覚・知覚機能の面から評価する
- 損傷部位、障害の範囲や程度を評価する
- 手の知覚機能の実用性を評価する
- 今後のリハビリテーション計画を立案する
ヒトの感覚分類

現在までに知られている感覚は、以下の通りです。
種類 | 概要 | 例 |
体性感覚 | 皮膚感覚や深部感覚。受容器が身体全体に分布している | 触覚 痛覚 温度覚 運動覚 圧覚 振動覚 |
内臓感覚 | 内臓に分布した神経で、内臓の状態を神経活動情報として感知する | 臓器感覚 内臓痛 |
特殊感覚 | いわゆるヒトの「五感」。受容器が特定部位に限局している | 視覚 聴覚 味覚 嗅覚 平衡覚 |
一般的分類にならえば、「感覚」は①体性感覚、②内臓感覚、③特殊感覚の3つに分類されます。
作業療法士が臨床場面で関わる機会が多い、体性感覚についてもう少し詳しくまとめます。
体性感覚の分類・種類
体性感覚は、①表在感覚、②深部感覚、③複合感覚の3つにさらに分類されます。
【表在感覚】…皮膚あるいは粘膜の感覚のこと
- 触覚
- 痛覚
- 温度覚
【深部感覚】…骨膜、筋肉、関節等から伝えられる感覚のこと
- 関節定位覚
- 振動覚
- 位置感覚
- 運動覚
【複合感覚】…「知覚」を含むより高次な感覚のこと
- 二点識別覚
- 皮膚書字覚
- 立体認知
- 二点同時識別感覚
最後に
本記事では、「感覚・知覚の基礎知識」をテーマに解説してきました。いかがでしたでしょうか。
「感覚」と「知覚」の違いや「感覚の分類」は理解が難しいところではありますが、臨床場面で関わる機会も多く、きちんと学習する必要があります。
本記事を通して、知識の整理に役立てていただければ幸いです。
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