脊髄損傷は回復する?【機能的予後について解説します】

こんにちは、カピまるです。

今回は、脊髄損傷の機能的予後について解説していきます。

「脊髄損傷となってしまった場合、回復する見込みはあるのでしょうか?一生車いすということも場合によっては考えられるのでしょうか?」

こうした疑問は、対象者ご本人のみならず、そのご家族や支援を行う医療従事者にとって、共通して感じていることではないでしょうか。

本記事を是非参考にしていただき、今後の支援の一助となれば幸いです。

以下の記事も併せてご覧下さい↓↓

スポンサーリンク

脊髄損傷の概要

脊髄損傷( Spinal Cord Injury )は、主として脊柱に強い外力が加えられることにより脊椎を損壊し、脊髄に損傷を受ける病態である。また脊髄腫瘍やヘルニアなど内的原因によっても類似の障害が発生する。

脊髄損傷 – Wikipedia

受傷機転としては、主に交通事故や転落といった高エネルギー外傷、また高齢者の転倒等が多く報告されています。

脊髄損傷では、損傷した脊髄の高位や部位、損傷の程度によって、異なる運動麻痺知覚障害膀胱直腸障害等が生じます。

以下の記事に詳細にまとめましたので、併せてご覧下さい↓↓

脊髄損傷者の機能レベルとADL到達可能動作

先ほども述べましたが、脊髄損傷では損傷した脊髄の高位や部位、損傷の程度によって、異なる運動麻痺や知覚障害、膀胱直腸障害等が生じます。

そのため障害された髄節レベルに応じて、残存する機能とそれに応じて到達可能なADL動作が把握出来ます。これを機能的予後と言います。

脊髄損傷者の機能レベルとADL到達可能動作について、以下にまとめていきます。

1.頸髄損傷者の例

レベルkey muscle残存する運動機能到達可能ADL福祉用具
C1-3表情
舌の動き
頭部の前屈・回転
ベッド上での生活
全介助
電動車椅子
人工呼吸器
C4肩甲挙筋呼吸
肩甲骨挙上
下顎での車椅子操作
会話が可能
全介助
電動リフター
電動ベッド
マウススティック
ヘッドポインタ
C5三角筋
上腕二頭筋
腕橈骨筋
肩関節屈曲・外転・伸展
肘関節屈曲・回外
車椅子駆動可能
自助具での食事
大部分介助
車椅子用手袋
(手関節固定)
手関節固定装具
C6肩関節内転
肘関節屈曲・回内
手関節背屈(伸展)
橈側手根伸筋
長短橈側手根伸筋
大胸筋
前鋸筋
車椅子駆動可能
(自動車運転)
自助具での書字
中等度~一部介助
万能カフ
スライディングボード
座薬挿入器
自己導尿用カテーテル
更衣用ループフック
C7肘関節伸展
手関節掌屈(屈曲)
指の伸展
上腕三頭筋
指伸筋
橈側手根屈筋
車椅子駆動可能
一部介助~ADL自立
手すり
座薬挿入器
C8指の屈曲
手の巧緻動作
手指屈筋車椅子駆動可能
ADL自立

2.胸髄損傷者の例

レベルKey muscle残存する運動機能到達可能ADL福祉用具
T1指の屈曲
手の巧緻動作
手指屈筋車椅子駆動可能
ADL自立
車椅子
T2~T6呼吸予備力増大
上部体幹の安定性
車椅子駆動可能
ADL自立
車椅子
T7~T12骨盤帯挙上
体幹の屈曲
介助で歩行可能
実用的には車椅子
ADL自立
長下肢装具
松葉杖

3.腰髄・仙髄損傷者の例

レベルkey muscle残存する運動機能到達可能ADL福祉用具
L1~L3股屈筋群
膝伸展筋群
股関節屈曲
膝関節伸展
介助で歩行可能
実用的には車椅子
ADL自立
長下肢装具
松葉杖
L4足背屈筋群足関節背屈(伸展)実用歩行可能
ADL自立
短下肢装具
一本杖
L5足指伸展筋群股関節伸展
膝関節屈曲
実用歩行可能
ADL自立
短下肢装具
一本杖
S1足底屈筋群足関節底屈(屈曲)実用歩行可能
ADL自立
短下肢装具
一本杖

ここでいうレベルとは、いわゆる「脊髄損傷高位」を示しています。

損傷高位の例として、「C4損傷=C5以下の障害⇒呼吸機能(C4の運動機能)は残存」ということを意味します。

脊髄損傷は治るのか【結論:完全回復は難しい】

脊髄損傷は、現代の医療においては完治が難しいと言われています。

受傷後に「今後ずっと車椅子での生活となります」と宣告されることも少なくありません。

その大きな理由としては、「一度損傷してしまった神経は元の状態に戻らない」からです

脊髄を含む中枢神経系は末梢神経とは異なり、一度損傷すると修復・再生されることは無い

現代の医学でも、これを回復させる決定的治療法は未だ存在しない

脊髄損傷 – Wikipedia

近年の研究で最も有望視されているものとして、骨髄や神経幹細胞を用いた神経再生の試みである「再生医療」が挙げられます。

しかしまだまだ研究段階であるため、実用化されるのは当分先になるのではないかと思われます。

そのため脊髄損傷のケアで大事になるのが、リハビリテーションと合併症の管理です。

1.脊髄損傷のリハビリテーション

受傷後、急性期を過ぎたらなるべく早くリハビリテーションを行うことが望ましい。

ICU(集中治療室)から一般病棟に移ったら、時機を見て少しずつベッドのリクライニング角度を上げていく(ギャッジアップ)。長時間臥床していたことにより、血圧が低下しており、急に起こすと脳貧血を起こす。次に車椅子に移る訓練になり、脳貧血を起こさないようになれば理学療法、手の機能に障害がある場合は作業療法といったリハビリに移る。

脊髄損傷のリハビリテーションとは失われた機能を回復させることではない。神経が再生しない以上、それは不可能だからである。リハビリの目的は、車椅子の操作などに習熟し、残された機能を最大限に使う訓練をすることである。

脊髄損傷 – Wikipedia

脊髄損傷者に対するリハビリテーションは推奨されています。

ここで重要なのは、リハビリテーションの目的は失われた機能の回復ではなく、車椅子の操作などに習熟し、残された機能を最大限に活用出来るようになることです。

病院のリハビリでは、「在宅復帰」を重要視します。在宅での生活を送り、社会復帰を果たしてもらえるよう支援を行います。

基本的な日常生活動作を獲得することは、復学や復職がスムーズに行えたり、外出や趣味に時間を使えたり、その後の日常生活の質の向上に大きくプラスの影響を与えることは間違いありません。

そのため、長期的な視点を持って地道にリハビリを継続していくことが重要です。

2.合併症の管理

合併症は在宅復帰を目指す上で大きな障壁となります。

リハビリテーションの中で日常生活動作の獲得に加えて、合併症の管理を自立させることが重要です。

主な合併症には、以下のようなものがあります。

  • 褥瘡
  • 排尿障害
  • 呼吸器障害
  • 循環器障害
  • 消火器障害

脊髄損傷による神経障害は、運動麻痺や感覚障害だけではなく、呼吸器や循環器といった様々な臓器障害を引き起こします。

この中でも特に重要で二大合併症と呼ばれる「褥瘡」「排尿障害」について解説します。

褥瘡

「褥瘡」とは、長時間同じ体勢でいることを原因とした血流障害による皮膚壊死のことです。

脊髄損傷では、運動麻痺によって自力で体勢を変えることが出来ないことや、感覚障害によって長時間座っていても痺れや痛みを感じることが出来ないことが影響し、褥瘡の発生に繋がります。

褥瘡の初期は皮膚が赤らむ程度ですが、悪化してしまうと最悪の場合、真皮を突き抜けて脂肪層までえぐられるように壊死を起こすこともあります。

脊髄損傷では、神経の損傷に伴って皮膚再生能力も落ちているため、長期間入院加療が必要となることも珍しくありません。

在宅生活を送るためには、褥瘡を発生させないことが非常に重要です。

予防法としては、定期的に身体を持ち上げる(プッシュアップ)、頻繁な体位交換等が挙げられます。

入院中のリハビリテーションではこうした動作の獲得を目指し、動作練習を行ったりします。

排尿障害

「排尿障害」は、膀胱直腸障害とも呼ばれます。

膀胱や尿道およびその括約筋を支配する神経には、下腹神経や骨盤神経、陰部神経といった様々な神経が関与しています。

脊髄損傷によって神経障害が生じると、尿意を感じにくくなったり自力で排尿することが困難となります。

そのため、多くの方が自己導尿用カテーテルを使用して導尿を行います。

この際、カテーテルを介して雑菌が尿道や膀胱に入り、炎症や敗血症といった尿路感染症の原因となります。

こうした感染症を引き起こさないためにも、排尿時には手指や器具の清潔を徹底する等、自己管理を行えるように練習することが非常に重要です。

最後に

本記事では、脊髄損傷の機能的予後について解説しました。いかがでしたでしょうか。

脊髄損傷のような中枢神経系の障害は、現在の医療では完治が難しいとされています。

そのため障害レベルに応じた機能的予後(到達可能ADL)を知り、その獲得を目指した適切な支援の提供が非常に重要です。

本記事を通して、知識の整理に役立てていただければ幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました