こんにちは、カピまるです。
今回は、『客観的臨床能力試験(OSCE:オスキー)の乗り越え方』について、作業療法学生の方に向けてまとめていきます。

実習前最後の実技試験って、実際何するんだろう…。
どんな準備をしていいか分からないし、不安だなぁ。。
このような悩みを抱える学生の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、主に以下の要点についてまとめます。
- OSCE(オスキー)の概要
- 学ぶべきポイント
- 実際の出題例
是非最後までご覧いただき、今後の学習に役立てて下さい!
客観的臨床能力試験(OSCE)の概要

『OSCE』とは、Objective Structured Clinical Examination(客観的臨床能力試験)の略称です。
ここでは、実際の臨床場面を想定した模擬患者を相手に問診や検査などを行い、対応の仕方や手技の確認を行います。
OSCEについては、以下のようにまとめられています。
OSCEとは、医学部、歯学部、獣医学部、6年制薬学部の学生が、臨床実習を行う臨床能力を身につけているかを試す実技試験である。この試験に合格することが、臨床実習に進むための条件となる。
OSCE – Wikipedia
このように、OSCEは実習前の最後の試練と言えますね。
OSCEで学ぶべきポイント

作業療法士である僕が思う、OSCEで学ぶべきポイントは以下のとおりです。
- 与えられた資料から症状について検討すること
- 各種検査・測定を行う難しさを知ること
- 結果をまとめ、報告すること
- 対象者の方への接し方を知ること
先ほども少し書きましたが、OSCEは臨床実習を行う臨床能力を身につけているかを試す実技試験です。
試験を通して、この4つのポイントについて学んでいきます。
それぞれもう少し詳しく解説していきます。
1.与えられた資料から症状について検討すること
後ほど例題としてご紹介しますが、OSCEではあらかじめ資料が渡され、以下のような情報がまとめられています。
- 一般情報(年齢、家族構成、職業歴、ニードなど)
- 医学的情報(診断名、現病歴、既往歴など)
- 他部門からの情報(Dr、NS、PT、STなど)
- 各種評価(主観的・客観的評価)
基本的には、すべてカルテに記載されている情報です。
ここから患者様の状態を予測し、どのような評価・測定を行うか判断します。
注意しなければならないのは、相手が出来ないことを指示してしまうことです。
- 自力で立てない人に、『○○まで移動しましょう』と指示する。
- 寝返りをうてない人に、『向きを変えてください』と指示する。
- 座位が保てない人に、介助なしで動作を指示する。
事前にリスクを把握しておき、適切に対処することが大切です。
OSCEを通して、こうした視点を持って関わることの大切さを学びましょう。
2.各種検査・測定を行う難しさを知ること
OSCEでは、緊張感を持って相手と接し、検査・測定をすることの難しさを経験出来ます。

実技の授業はこれまでにも何度かあったよ!
今さら注意することなんて無いんじゃない…?
OSCEでは模擬患者を相手に行うため、学生同士でやるのとはわけが違います。
- 思ったように物事が伝えられない
- 相手の身体を上手く動かせない
- 検査内容をど忘れしてしまう
- 緊張で手足が震える
OSCEで事前に体験しておくことは、臨床実習に向けて自分自身の成長に繋がります。
上手く出来ずに落ち込むこともあるかもしれません。
OSCEでの反省点を臨床実習に十二分に活かせるよう、自己学習の糧としていきましょう。
3.結果をまとめ、報告すること
OSCEでは、一通りの検査・測定を行っておしまいではありません。
試験では、例として以下のように出題されます。

『○○と△△について評価して下さい。
そこからこの方のトイレ動作における問題点を説明しなさい』
このように担当教員に対して、その場で得られた情報をまとめ、報告する必要があります。
臨床場面でも、このようにコミュニケーションを取る機会は非常に多いです。
結果をまとめ、報告する力を身につけておくことは、実習中に円滑なコミュニケーションを取ることに繋がります。
臨床実習で活かせるように、OSCEを通してしっかりと学んでいきましょう。
4.対象者の方への接し方を知ること
OSCEでは基本的に、試験の様子をビデオで撮影します。
試験後には自己学習として、自分や他者の言動についてお互いにフィードバックを行います。
検査・測定手技の正誤だけではなく、
- 言葉遣い
- 口調
- 視線の送り方
自分では気付きにくい、自分の姿を客観的に見ることが出来ます。

相手と上手く話せてないし、挙動不審だ…
実習本番がすごく不安になってきたよ。。
OSCEは、自分自身の良い点・悪い点に気付くためのきっかけに過ぎません。
上手く出来なくても凹まず、前向きにその後に活かしていきましょう。
実際の出題例をご紹介

参考までに、OSCEの出題例をご紹介します。
- 70代男性(女性)、165(155)cm、70(60)kg
- 家族構成:長男、孫と3人暮らし(遠方のA市在住)
- キーパーソン:長男
- 家屋状況:一戸建て
- 職業歴:事務職、定年後は無職
- 経済状況:年金
- 趣味:ウォッチング
- ニード:自立歩行、ADL自立
- 診断名:脳内出血(右前頭頭頂葉皮質下)
- 障害名:左片麻痺
- 現病歴:X日:飲酒後就寝、左半身脱力、A市立病院受診。CTにて脳出血認める。家族の希望により当院転院。X+1日:開頭血腫除去術を行う。
- 既往歴:X-2Y日:ポリープにて精査入院。腰痛。
- 服薬状況:アテレック、タナトリル、ムコスタ。
- Ns: ADLは術後X+7日のため食事動作以外全介助。コミュニケーション良好。
- PT: X+2日開始。病室にてROMex、座位保持exを実施。目標:自立歩行。
- 第一印象:左側を向かず表情の変化も殆どない。リハビリは消極的。
- 面接・A氏の様子:
- 初期における主訴は頭痛、腰痛、睡眠不足
- 基本動作自立、自立歩行、在宅復帰。ICUから一般病棟へ移動(X+6日)
- 自ら神経質な性格と述べ、職員や他患の不満を述べる場面が多い。
- リハスタッフには好意的で気遣いを示す事もある。
項目 | 初期評価(X+7~14日) |
意識 | JCSレベル1 |
バイタルサイン | 血圧: 145/100mHg、 脈拍:50~65/分 |
腱反射 | 麻痺側亢進 |
病的反射 | バビンスキー反射陰性, ホフマン・トレムナー反射陽性 |
筋緊張(臥位) | 安静時・他動時共に麻痺側上肢、肩甲骨周囲筋、体幹、下肢で低緊張 |
感覚(麻痺側) | 表在:左上下肢中等度~軽度鈍麻 深部:上肢では感覚脱失、下肢では中等度鈍麻。 |
バランス機能 | 座位:左右ともに頚部・体幹の立ち直り反応あり。 |
Br stage | 麻痺側上下肢、手指ともにII |
握力 | 非麻痺側:25kg |
ピンチ力 | 非麻痺側:指腹つまみ3Kg、側腹つまみ4Kg |
MMT | 非麻痺側:未実施。観察より5程度と判断 |
高次脳機能 | 線分抹消テスト、図形模写より左半側空間無視、観察より注意障害の疑い |
心理面 | プライド・向上心あり,自尊心が傷つき葛藤している |
痛覚 | 頭痛、腰痛 |
- 基本動作
寝返り | 非麻痺側への寝返り:介助頚部を右上部へ挙上するが骨盤・体幹の回旋不可。 |
起き上がり | 臥位から座位:介助 介助にて側臥位、on elbowからon handへと姿勢変化出来ない 座位から臥位:介助にて側臥位、骨盤と体幹の回旋不可、下肢の挙上不可 |
立ち上がり | 介助:つかまり立ちするが麻痺側へ転倒しそうになる |
端坐位 | 介助:後方または麻痺側へ傾く |
立位 | 介助:非麻痺側でベッド柵につかまるが、体幹が麻痺側へ側屈しやすく非麻痺側で支持 |
- ADL(FIM:66点 / 126点)
食事 | セッティングにて自立。食べこぼしはあるが食べ残しはない(6点) |
整容 | セッティングにて自立(5点) |
更衣 | 介助(上衣・下衣ともに1点) |
トイレ動作 | 尿便使用。摘便(1点) |
入浴 | 未実施(1点) |
移乗 | 介助(1点) |
移動 | 介助(1点) |
その他 | コミュニケーション問題なし。 痛み・睡眠不足を理由にリハを休む事から易疲労性が伺える。 指示を聞かずに無関係な事を話す事もあり集中力・注意力低下が伺える。 |

データばっかり沢山情報があるね…。
ここから患者さんの姿を想像するのかぁ。。
具体的な設問などは与えられないため、データから患者さんの姿を想像する必要があります。
この方は与えられた情報にあるように、ADLの自立や在宅復帰を目標としています。
そのためセラピストとしては、この方が日常生活を送る上での問題点を把握し、それに向けたアプローチを行う必要があります。
具体的には、
- トイレ動作
- 更衣動作
- 食事動作
- 入浴、清拭
における問題点について考察します。
そのために必要な評価として、以下のものが挙げられます。
- 表在、深部感覚
- 腱反射
- 座位からの立ち上がり動作
- 認知機能
- バランス機能
- 関節可動域、リーチ動作
- 家屋評価(主に聞き取りになるが…)
つまり、問題は以下のように出題されます。
- 「表在、深部感覚を評価し、食事動作における問題点を説明しなさい」
- 「立位、座位姿勢を評価し、更衣動作における問題点を説明しなさい」
様々な角度から、複数の問題が出題されることが考えられます。
事前に与えられたデータをしっかりと読み込み、患者さんの姿を具体的に思い浮かべましょう。
そして実施出来そうな評価手技については確認し、考えられる結果や問題点については事前に考えておきましょう。
最後に
本記事では、『客観的臨床能力試験(OSCE:オスキー)の乗り越え方』をテーマに、作業療法学生の方に向けてまとめました。いかがでしたでしょうか。
実習前の最後の試練ですが、客観的に自分を見つめ直すチャンスでもあります。
本記事で紹介したポイントを心にとめて、学びのある試験を迎えて下さい。
本記事を今後の学習に役立てていただければ幸いです。
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