作業療法を学んでいる学生です。臨床実習がもうすぐはじまります。そもそも実習ってどんなことを学ぶのですか?概要や実施内容について、分かりやすく教えてください。
こうした疑問に答えます。
作業療法学生にとって、在学中いちばんのイベントこそ、「臨床実習」です。
「大変そう・・」「うまくやっていけるかな・・」と不安な気持ちが先行しがちですが、
- そもそも実習ってどんなことするの?
- 実習に向けてどのような準備が必要?
といったように、実習の基本的な部分について、あまりよく分かっていない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、まずはじめに確認していただきたい内容ということで、作業療法臨床実習の「概要と主な実施内容」をテーマに解説していきます。
- 実習の基本的な概要について知りたい
- 事前準備として何をすべきか知りたい
- 実習を控えていて、不安に感じている
本記事を一通り読めば、実習の概要について十分理解でき、最高のスタートダッシュを切れるので、ぜひ参考にしてください。
作業療法臨床実習の基礎知識
早速ですが、まずはじめに「臨床実習って何?」ということからお話します。
基本的には、日本作業療法士協会の作業療法臨床実習の手引き~第4版~に基づきますので、こちらもご確認ください。
そもそも「臨床実習」って何のこと?
「臨床実習」とは、学内を出て「医療機関」「福祉施設」で行う実習のことです。
作業療法士の養成課程では、必修科目に指定されており、必ず実施する必要があります。
作業療法分野においては、以下の3つの実習に分けられます。
実習の種類 | 実施学年 | 実習期間(目安) | 実習先 |
---|---|---|---|
基礎学実習 (見学実習) | 1(2)年 | 1~2週間 | 病院、施設など |
評価学実習 | 2(3)年 | 2~4週間 | 病院、施設など |
総合実習 | 3(4)年 | 6~10週間 | 病院、施設など |
主な実施内容
3つの実習を通して「学習・実施する内容」には、以下のものが挙げられます。
- 作業療法士の働き方について
- 病院・施設の概要について
- カルテからの情報収集
- 他職種への情報の聞き取り
- 面接・観察による評価
- 各種評価表を用いた評価
- 治療プログラムの立案
- 作業療法プログラムの実施
- 効果検証(中間・最終評価)
- 実習先での症例発表
それぞれ実習によって、実施する内容は異なります。
3(4)学年で実施される「総合実習」では、約6~10週間の実習を通して、これらすべてを行うことになります。
①:基礎学実習(見学実習)
基礎学実習(見学実習)は、文字どおり「見学」による学習をする実習です。
病院・施設で実際に行われている作業療法場面を見学したり、部分的に体験させてもらうこともあります。
基礎学実習は1(2)年で実施されることが多く、「作業療法士ってどんなことするの?」という職業に対するイメージを具体化することができます。
②:評価学実習
評価学実習では、実際に評価・検査を行い、治療プログラムの立案を行う経験ができます。
また評価だけではなく、カルテからの情報収集や他職種の方へのインタビューなども行うため、より実践に近い内容の実習と言えます。
2~4週間と比較的短い実習ですが、内容は盛りだくさんのため、やや大変に感じるかもしれません。
③:総合実習
総合実習は、これまでの「総まとめ」とも言える実習です。
初期評価からはじまり、治療プログラムの立案・実践を行い、その効果判定(中間・最終評価)まで一通り経験します。
また実習先によっては、症例発表という形で資料をまとめる必要もあります。
6~10週間を2~3施設とかなり長期間の実習になるため、とても大変な実習であることは言うまでもありません。
実習の意義と目的
作業療法臨床実習の手引き~第4版~では、以下のように定められています。
実習の意義
実習の目的
ここで大切なのは、「実習指導者の指導のもと」という部分です。
臨床実習では、指導者の先生からの教えを真似て、さまざまなことを経験させてもらうのが基本です。
「すべて1人でやらなければいけない」と気負う必要も、不安に感じる必要もありません。
指導者の先生がきちんと教えてくださるので、「教えてもらう姿勢」で臨むことが大切です。
実習開始までの流れ
「実習開始までの流れ」について、先ほど紹介した3つの実習のうち、「総合実習」を例に紹介します。
①:実習先の選択→決定(1~2月)
だいたい1~2月あたりに、学校の方から実習先の希望調査があります。
当然ですが、病院・施設によって、対象とする疾患・病状が大きく変わってきます。
実習のモチベーションを保つためにも、自分の興味のある領域を選択することが大切です。
通われている学校によって領域は異なると思いますが、
- 身体障害領域
- 精神障害領域
- 発達障害領域
- 老年期障害領域
のうち、2~3か所に行くことが多いのではないかと思われます。
②:臨床実習指導者会議(2月~)
それぞれの実習施設における実習指導者(スーパーバイザー:SV)の方が集まり、実習の目的や注意点などについて、学校側から説明を受ける会議です。
多くの学校では、終了後に実習指導者との顔合わせが行われています。
この際、実習中の注意点などについて、あらかじめ伺うようにしましょう。
③:実習先への事前連絡(3月後半~)
実習が始まる1週間前くらいに、改めて実習先へ電話で連絡を行います。
主な内容として、
- 初日の集合場所・時間
- 昼食の有無(食堂利用か、持参するか等)
- 持ち物(検査器具、パソコン等)
といったことについて、実習指導者の先生に確認をします。
事前に聞く項目についてはリストアップしておき、聞き忘れることがないよう注意しておきましょう。
以下の記事では、「実習先への電話」について詳しく解説していますので、併せてご確認ください↓↓
実習の主な実施内容まとめ
作業療法臨床実習における「主な実施内容」として、以下の5つがあります。
- カルテ・他職種からの情報収集
- 各種評価の実施
- 治療プログラムの立案・実施
- 効果検証(中間・最終評価)
- 症例発表
それぞれについて、順番に解説していきます。
①:カルテ・他職種からの情報収集
いきなり具体的な評価を行う前に、まずはカルテ・他職種の方から情報収集を行います。
その中で、以下のような内容について確認しておきましょう。
- 基本情報(氏名、年齢など)
- 医学的情報(診断名、合併症、現病・既往歴など)
- 社会的情報(家族構成、家屋状況、経済状況など)
- すでに行われている初期評価の結果
カルテには、作業療法士だけでなく、
- 医師
- 看護師
- 理学療法士
- 言語聴覚士
- ソーシャルワーカー
- ケースワーカー
といった、さまざまな職種の方が行った評価についても記載されていますので、適宜情報を収集しましょう。
さらに具体的な情報を知りたい場合には、時間を見つけて直接お話を伺いに行きましょう。
②:各種評価の実施
カルテ・他職種の方から情報収集を行った後は、実際に評価を行っていきます。
まず初めに、面接・観察による評価を行うことで、患者さんの趣味や興味・関心、ニード等について聞き取ります。
その後、さまざまな評価表の中から患者さんの負担も考慮しつつ、必要なものを厳選して行います。
③:治療プログラムの立案・実践
評価結果を踏まえて、治療プログラムを立案し、実践します。
いきなりプログラム立案⁉そんなこと言われても、何をどうすればいいか分からないよ・・
このように思われる方が大多数だと思いますが、そこは安心してください。
実習指導者の先生は、担当する患者さんに関するレポートを通して、評価結果の解釈やプログラムの立て方、実践方法について、丁寧に指導してくださいます。
先生方が行っているプログラムを見学し、その内容を模倣してみるのも1つの手です。
あまり臆せず、気になったことについては、さまざまな先生方からアドバイスをもらうことが大切です。
④:効果検証(中間・最終評価)
プログラムを実施した後は、中間評価・最終評価を行うことによって、内容や効果の検証を行います。
この際、いくつかの評価スケールを用いて、
- 身体機能
- 認知機能
- 巧緻性
といった項目を評価し、数値が改善しているかどうか確認します。
中間評価の時点で、想定していたような効果が出ていない場合には、思い切ってプログラムを変更するなど、適切に対応する必要があります。
⑤:症例発表
実習の最後には、担当した患者さんについて、実習先で症例発表を行います。
パワーポイントやレジュメを作成する場合がほとんどですので、早めに準備を進めておきましょう。
とても緊張するかと思いますが、さまざまな先生方から臨床的な視点で意見をいただける貴重な場です。
今後の学習に活かせるよう、しっかりと準備をしたうえで臨みましょう。
まとめ:作業療法臨床実習の概要と主な実施内容について
以上、作業療法臨床実習の「概要と主な実施内容」をテーマに解説しました。
臨床実習の大まかな流れについて、さいごにもう一度おさらいしておきましょう。
作業療法臨床実習の大まかな流れ
- 実習先の選択、決定
- 臨床実習指導者会議
- 実習先への事前連絡
- カルテ・他職種からの情報取集
- 各種評価の実施
- 治療プログラムの立案・実践
- 効果検証(中間・最終評価)
- 症例発表
非常に盛りだくさんの内容ですが、具体的な実施内容とその流れを事前に把握しているだけで、実習に対する不安感は少なからず軽減されるはずです。
少しでも実りある実習になるよう、できるかぎりの準備をして臨むようにしましょう。
今回は以上になります。最後までご覧いただき、ありがとうございました。