かぴまる暑い時のレースでタイムを最も左右する指標って何だろう?それが分かれば、トレーニングにも活かせるだろうし、気になるなぁ・・。
今回は、こうした疑問に答えます。
- 論文の基本情報とリサーチクエスチョン
- 実験結果:明らかになった3つの真実
- 日々のトレーニングに活かす実践プラン
こんにちは、かぴまるです。
僕自身も月間400kmほど、サブ40(フルマラソン2時間40分切り)を目標にランニングを楽しんでいます。
夏場や初秋のレース、あるいは暑い日に行われる記録会などで、
いつものペースがまったく維持できない・・
急に体が重くなってペースダウンしてしまった・・
・・という苦い経験を持したことがあるという方も多いのではないでしょうか?
『暑さに強い・弱い』は、単なる精神論や体質の問題と思われがちですが、スポーツ科学の世界では、暑熱環境下で人間のパフォーマンスがどのように変化するのか、生理学的データを用いた研究が盛んに行われています。
そこで、今回紹介するのがこちら↓
2017年に発表された『暑い環境下での持久走パフォーマンスの決定要因(James et al., 2017)』に関する論文です。
本記事では、暑いレースにおける『ランナーのタイムを最も左右する決定的な指標とは?』『暑い日のレースタイムを事前に予測するにはどうすればいい?』ということについて、分かりやすく解説していきます。

ブロックエディターに完全対応!
直感的な操作で簡単ブログ作成!
見るたび気分が上がるデザイン!
圧倒的な使い心地の最強テーマ!
圧倒的な使いやすさ、どんどん追加される新機能、おしゃれなデザイン性
そのすべてを兼ね備えた最強のWordPressテーマ「SWELL」
\ 国内最高峰の使い心地を手に入れよう /
論文の基本情報とリサーチクエスチョン

まずはじめに、今回紹介する論文の基礎情報とリサーチクエスチョン(問い)について整理します。
論文の基本情報
- タイトル:Defining the determinants of endurance running performance in the heat(暑熱環境下における持久走パフォーマンス決定要因の定義)
- 著者:Carl A. James et al. (2017)
- 掲載誌:TEMPERATURE
従来のマラソン・中長距離パフォーマンスモデル
涼しく快適な環境下(10〜15℃前後)において、中長距離走やマラソンのタイムは、以下3つの生理学的指標によって約90〜95%以上という高い精度で説明・予測できることが分かっています。
3つの生理学的指標
- 最大酸素摂取量(VO2max)
・・1分間に取り込める酸素の最大量(心肺機能)
- 乳酸性作業閾値(LT / LTP)
・・血液中に乳酸が急激に溜まり始めない限界のペース(巡航速度の限界)
- ランニングエコノミー(RE)
・・一定速度で走る際に消費する酸素量(走りの効率性)
加えて5kmや10kmといった種目では、vVO2max(最大酸素摂取量に達した時の走速度)という指標がタイム予測の指標として使われています。
しかし、ここに『30℃を超える猛暑』という変数が加わったとき、この方程式は崩れ去ります。
体温は上昇、心拍数は跳ね上がり、脳は「暑くて苦しい」という危険信号を発するのです。
この研究が解き明かしたい2つの問い
この研究が解き明かしたい問いというのが、以下の2つです。
2つのリサーチクエスチョン
- 『暑いレース(5km TT)成績」の場合、従来モデルの指標はどれくらい有効か。
- 『暑い部屋 or 涼しい部屋で測ったデータ』どちらが正確にレースタイムを予測できるか。
実験方法:暑い部屋と涼しい部屋での比較

研究チームは、日常的にトレーニングを行っているクラブチーム所属のランナー17名(男性16名・女性1名、5km平均タイム:20分25秒前後)を対象に実験を行いました。
実験は、以下の3ステップで実施されました。
実験の概要
- 涼しい環境での漸増負荷テスト(GXTCOOL)
- 設定:13℃・湿度50%
- 方法:トレッドミル上、段階的にスピードと傾斜を上げて限界まで走る
- 測定項目:VO2max、LT、LTP、RE、vVO2max
- 暑い環境での漸増負荷テスト(GXTHOT)
- 設定:32℃・湿度60%
- 方法:GXTCOOLと同じプロトコルを、暑熱室の中で実施
- 暑い環境での5kmタイムトライアル(5km TT)
- 設定:32℃・湿度60%
- トレッドミル上、全力で5kmを走りタイムを測定
実験のポイントは、『涼しい部屋で測ったデータ』と『暑い部屋で測ったデータ』のそれぞれが、『暑い部屋での5kmタイムトライアルの結果』とどう相関するかを比較検証した点です。
実験結果:明らかになった3つの真実

今回の実験で明らかになった結果は、以下の3つです。
明らかになった3つの真実
- 最も強く相関した指標は、『vVO2max』
- 『涼しい部屋での測定』の方が、予測精度が高い
- 生理的データだけでは説明できない要因がある
それぞれ順番に見ていきましょう。
①:最も強く相関した指標は、『vVO2max』
実験の結果、涼しい環境で測ったデータ・暑い環境で測ったデータのどちらにおいても、5kmタイムトライアルの成績と最も強く相関したのは、vVO2maxでした。
実験結果
| 測定条件 | 指標 | 5km TTとの相関(γ) | 相関の強さ |
|---|---|---|---|
| 涼しい環境 (GXTCOOL) | vVO2max | -0.90 | 極めて強い |
| VO2max | -0.67 | 中~強い | |
| LT | -0.79 | 強い | |
| LTP | -0.8 | 強い | |
| RE | 0.62 | 中程度 | |
| 暑い環境 (GXTHOT) | vVO2max | -0.83 | 極めて強い |
| VO2max | -0.7 | 強い | |
| LT | -0.77 | 強い | |
| LTP | -0.78 | 強い | |
| RE | 0.36 | 相関なし (有意差なし) |
- LT ⇒ 乳酸性作業閾値
- LTP ⇒ 乳酸ターンポイント
- RE ⇒ ランニングエコノミー
※ 相関係数(γ)は、-1 に近いほど『そのスピード・数値が高いほどタイムが速い』ことを意味します。
vVO2maxは、一言でいえば『心肺機能の限界に達したときのスピード』です。
いくら最大酸素摂取量が大きくても、それを実際の走速度に変換できなければ意味がありません。
暑い環境下のレースであっても、基礎となる「心肺機能の高さ×走速度の効率」という絶対的な走力ベースがタイムを最も大きく支配していることが実証されました。
②:『涼しい部屋での測定』の方が、予測精度が高い
暑いレースのタイムを予測したいなら、暑い部屋で測定した方が正確じゃない?
と考えがちですが、統計モデルによる予測精度(決定係数:R²)は以下のようになりました。
統計モデルによる予測精度
- 暑い部屋で測った場合:タイムの72%を説明(R²=0.72)
- 涼しい部屋で測った場合:タイムの86%を説明(R²=0.86)
つまり、暑い部屋で測定したデータよりも、涼しい部屋で標準的に測定したデータを使った方が、暑いレースのタイムをより正確に予測できたのです。
暑い部屋だと予測精度が下がるワケ
論文ではその理由として、『発熱や暑さに対する生理的ダメージの受け方に、個人差が出過ぎるから』と分析されています。
暑い部屋で段階的に負荷を上げるテスト(GXT)を行うと、体型や筋肉量、発汗能力、暑熱順化の度合いによって、体温の上昇スピードや乳酸の溜まり方に大きなバラつきが生まれます。
特に『RE(ランニングエコノミー)』は、暑い部屋のテスト初期では「筋肉が温まって動きが良くなる」効果が出る人がいる一方で、後半になると「過換気や体温上昇で代謝コストが増加する」など、数値が乱れてタイムとの相関が消滅してしまいました。
結論として、自分の本来のポテンシャルや走力指標を正しくモニタリング・測定したい場合は、無理に暑い環境で測定するのではなく、涼しく快適な室内で測定を行うのが科学的に正しいアプローチとなります。
③:生理的データだけでは説明できない要因がある
常温下(15℃前後)で行われた過去の有名な研究(McLaughlin et al., 2010など)では、VO2maxや乳酸閾値などの生理学的指標だけで、レースパフォーマンスの95%以上を説明できていました。
しかし今回の実験では、涼しい測定データを使っても86%、暑い測定データでは72%しか説明できませんでした。
かぴまるつまり、暑い環境では、生理的な数値(心拍数や乳酸値など)だけでは説明がつかない「謎の要因」が存在するってことだね!
『謎の要因』の正体とは?
論文では、
行動的体温調節(Behavioral Thermoregulation)
主観的ストレス(感覚・不快感)
であると結論付けられています。
人間は暑い環境で走っているとき、コア体温(深部体温)が危険水域に達する前であっても、皮膚感覚から脳が危険性を判断し、無意識にペースを抑制(自発的なペースダウン)します。
つまり暑いレースでは、筋肉や心肺機能の限界よりも手前で「脳からの精神的・感覚的なブレーキ」がかかるため、従来の生理学的モデルだけではタイムが説明しきれなくなるのです。
日々のトレーニングに活かす実践プラン

この研究結果を、日々のトレーニングやレース戦略にどう生かすべきでしょうか?
論文の考察(Practical Applications)から、ランナーが取り入れるべき具体策を以下の3つにまとめました。
3つの実践プラン
- 涼しい環境・時間帯のトレーニングで『vVO2max』を高める
- 走力チェックは涼しい部屋で行う
- 暑さへの不快感を減らす(暑熱順化)
それぞれ順番に見ていきましょう。
①:涼しい環境・時間帯のトレーニングで『vVO2max』を高める
暑い夏場であっても、パフォーマンスの土台となるのは『vVO2max(最大酸素摂取量時のスピード)』です。
夏場に暑い外で無理に追い込もうとすると、体温が上がりすぎて質が高い練習(ターゲットペースでの走行)ができなくなります。
エアコンの効いた室内トレッドミルや、早朝の涼しい時間帯を活用し、インターバル等のメニューをこなしましょう。
基礎エンジンを高めておくことが、そのまま暑いレースでの強さにつながります。
②:走力チェックは涼しい部屋で行う
自分の現在の走力やトレーニングゾーン(Tペースやインターバルペース)を把握するためのタイムトライアルや漸増負荷テストは、暑い外で行っても正しいデータが得られません。
シーズンの走行能力を測定・比較したい場合は、環境が一定に保たれた涼しい屋内施設や室内トレッドミルで行うのがベストです。
③:暑さへの不快感を減らす(暑熱順化)
暑熱下でのタイム低下を防ぐには、脳がかける感覚的ブレーキ(不快感や主観的運動強度:RPE)を和らげるアプローチが有効です。
いわゆる暑熱順化と呼ばれるものですが、レースの2〜3週間前から低強度のジョグやサウナ・湯船を活用し、暑さに体を慣らします。
その他に、プレクーリングと呼ばれる、レース前にアイススラリー(細かい氷の飲料)を飲んだり、手のひらを冷やすなどして深部体温の上昇を遅らせることも有効です。
5. まとめ

さいごに、論文のポイントを改めて振り返りましょう。
本記事のポイントまとめ
- 暑いレースと最も相関がある指標は『vVO2max』
- 涼しい場所で測ったデータの方が予測精度が高い
- 暑さ・不快感による脳のブレーキも大きく影響する
夏場や暑い環境での走力を伸ばすためには、①:快適な環境で質の高いインターバルで基礎走力を高めること、②:暑熱順化や冷却テクニックで脳の不快感を最小限に抑えること」という、2つの軸が欠かせません。
本記事で紹介したアプローチを取り入れながら、暑い季節のトレーニングやレースに臨みましょう!
今回は以上です。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
\ 最大55%OFF、月額649円~ /
今なら最大55%OFF、月額649円~お得にWordPressでブログがはじめられます!
さらに独自ドメイン2つ無料、初期費用無料と特典も盛りだくさん!
このお得な機会にブログライフをスタートしてみませんか?



